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性悪説:荀子

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年末に新聞の集金の人にもらった「暦」を何気なく開いていて、「四緑木星」欄の挿絵のわきに、「人の性は悪、その善なるは偽なり」とあるのが目に入った。
これは、高校の漢文で習った「荀子」ではないか!

荀子は古代中国の思想家で、性善説を唱えた孟子に対して性悪説を唱えたことで知られる。
その思想を伝える「荀子・性悪篇」の出だしが「人の性は悪なり。その善なるは偽なり」なのである。

人間の本性は「悪」であり、「善」の部分は偽である・・・結構強烈な出だしである。
ここでいう悪とは、世界征服をしたいとか、不正に巨万の富を得たいとかの大それたものでなくて、ラクして金を儲けたいとか、人よりちょっと得したいとか、努力せずに何かを手に入れたいとかの、ささやかな悪である。
偽というのも、いつわりではなくて、人為的に作られたもの、後天的なものをさしている。
人間の本性は悪であり、善(のように見えるもの)は、教育等により後天的に作られたもの・・・というのが荀子の主張である。

なぜそうなのか・・・荀子は次のように論を進める。

人は生まれながらに利益を好む。ほっておくと争いが起きて、譲り合いの心が失われる。
人は生まれながらにして憎しみの心がある。ほっておくと残酷なことをして、忠義や信義が失われる。
人は生まれながらにして美しい音曲や美しい女を好む心がある。ほっておくと淫乱なことに走り、礼儀や秩序が失われる。
人が本性や感情に従って行動すれば、必ず奪い合いが起き、秩序が乱れた状態になってしまう。

こうならないために正しく教える者が礼儀を説いて、そのあとで譲り合いの心が生まれ、道理が定まり世が治まるのである。
これらのことから、人の本性が悪であることは明らかである。
人の本性は悪で、善にみえるのは後天的なものなのである。

最初にいいたいこと(=結論)をどーんと押し出し、以下細かく例を挙げて自説を補強し、最後に結論でしめる。
明確な論旨と全くスキのない展開・・・この論のどこが間違っているだろうか。全くこのとおりではないか・・・と、高校生だった私は思ったのである。
(続く)
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Commented by waku59 at 2020-01-07 11:03
続きが楽しみです♪
Commented by nicomachus at 2020-01-07 12:26
余り面白そうにもない話題にご期待いただき、誠にありがとうございます。
できるだけご期待にそえるよう、続けてみます。
by nicomachus | 2020-01-07 06:11 | 学問 | Comments(2)

昏るるに未だ遠し


by nicomachus